
◆アーティストのイメージを魅力あるサウンドに仕上げるもうひとりのミュージシャン
さまざまな音響機器を駆使してチャンネルごとに収録した音をミックスダウンし、ひとつの楽曲に仕上げていくのが、ミキサー(レコーディングエンジニア)の仕事です。鋭い耳と音楽センス、そして音響機器を自在に操る高い技術をもってサウンドに豊かな色彩を与えていく、いわば音の演出家。求められている音を敏感にキャッチする感性が必要です。
ミキサーの仕事の第一段階は、ミキシングコンソール(調整卓)を使って、マルチトラックレコーダーに楽器ごとに録音を重ねていきます。今のポップミュージックのレコーディングでは、24チャンネル、48チャンネル、あるいはそれ以上のミキシングコンソールを使います。そのときに、各楽器からその曲にもっともふさわしい音が録れるように、マイクをセッティングしたり、ミキシングコンソールのイコライザーやほかのエフェクターなどを駆使します。
すべての楽器から最良のテイクを収録したら、最終的にCDなどを聴くようなステレオ2チャンネル、または5.1chサラウンドのようなマルチチャンネルに全部の音の素材をミックスします。ここがミキサーの腕の見せどころです。トラックのサジ加減ひとつで、サウンド全体の印象はガラッと変わったものになってしまうからです。
アーティストやディレクター、アレンジャーの希望を反映させながら、ひとつの曲を仕上げるまでには、何百回もの試行錯誤が繰り返されます。それを苦労とせず、どこを改善していけばよいかを断えず自問自答しながら、納得のいくまで努力を重ねていける人が、信頼されるミキサーといえるでしょう。
スタジオ内の音響機器のオペレ ーションを想像する人は多いが、実際には機械に対する知識だけではなく、高度な音楽的センスが必要とされるアーティスティックな仕事。
楽譜や楽器に対する知識に加えて、音楽理論や最新音響機器の操作を十分理解したうえで、ディレクターヤアーテイストの制作意図を把握し求められる最高の音を作り出していきます。
ライブコンサートで広い会場のどこにいてもアーティストが伝えたい音を明瞭に自然に届けるようシステムを組みます。観客に対してだけでなく、ステージ上のアーティストたちにもモニターの返しを含めて自然に演奏が行えるようにするのが仕事です。
これはアーティストのサウンドを理解していなければできない技術です。海外アーティストがPAミキサーを伴って来日するのもこのためです。アーティストにとっては何よりのパートナーでしょう。
デジタルサウンドが主流になったここ数年、放送音声やMA(マルチ・オーディオ)の現場も大きく変わっています。映像素材に音響効果の作った別撮りの音や音楽を入れ、オンエアーされる最終的な形に仕上げるのがMAの現場。今までのように映像から発想するのではなく、音作りがまず演出の基本に置かれて、映像を発想する音作りが求められてきています。

レコーディングスタジオでは、採用の9割を専門スクール卒が占めるといいます。スタジオに就職してアシスタントエンジニアからチーフに昇格するまで早い人でも3年。最初は辛抱が必要です。仕事で意欲的なところを見せていれば、それだけ早くディレクターやアレンジャーから指名され、他所のスタジオから引き抜きの誘いがあるケースも少なくありません。

多くのスタッフと関わる仕事なので、コミュニケーション能力は重要です。また、音響機器のテクニックだけではなく、音楽的感性も問われるので、多くの音楽を聴き自分の感性として表現できることも必要です。